映画『デリーに行こう!』は、飛行機の行き先変更で夜のジャイプルに降り立ったビジネスパーソン・ミヒカ(ラーラ・ダッタ)と商売人・マヌ(ヴィナイ・パタック)が、陸路で目的地のデリーを目指すロードムービーだ。ハイヒールで歩く投資銀行家のミヒカと、よくしゃべる中年男のマヌ。プロファイルが全く異なるふたりが織りなす人間模様は、"シンプルなロードムービー"と言っていい。
ひとつだけ気になるターニングポイントがある。乗り物を乗り継ぎ、やっとの思いで、二人はデリーにつながる小さな鉄道駅へたどりつく。ミヒカは「1等車に乗るから」と、切符売り場でマヌと別れるが、財布を盗まれたことに気づき、走りだした列車に乗ったマヌに助けを求めるのだ。そしてマヌはある大胆な方法で、ミヒカの窮地を救う。そこまでの二人の関係は、いわば境遇を同じくするだけの「同乗者」だったのだが、このできごとをきっかけに、二人の関係は秘密を共有しあう、いわば「共犯者」へと変わっていくのだ。わたしはマヌの心中を想像する。なぜ、マヌはいわば「行きずり」の相手にすぎないミヒカに、大胆な手段を取ってまで手を差し伸べたのだろう。マヌは照れ笑いを浮かべて、わたしにこう言うかも知れない。「インドの男ならきっと誰でもそうしていたさ」と。
寄稿:澁澤由之(ライター)
『デリーに行こう!』
オーディトリウム渋谷ほか 全国順次公開
デリーに行こう公式サイト http://www.bollywoodeiga.com/
映画『デリーに行こう!』の中で何度も登場する台詞があります。
「大丈夫、たいしたことはない!!」
”
Kaunsi Badi baat ho gayee”(what’s the big deal?)
インドを旅したことがある人なら、誰もが一度は体験する「ノープロブレム」。
どんなに問題があるように思えても、「ノープロブレム」を繰り返されると、そんなものかなぁと思えてきてしまいます。
今ちょっと思い出した限りでも、、
ホテルで「お湯が出る」と確認してからチェックインしたのに、シャワーが水。
文句を言ったら、バケツにお湯を持って来て終了。(入りづらいけどなんとかなった。)
二人分のツアーを予約していたはずなのに予約が入っておらず、文句を言うと、当日その場でツアーバスに乗れて事なきを得る。(しかもちょうど二人分だけ席が空いている奇跡。)
なんというか、最終的には「大した問題はないから、いっか」とこちらもインドに慣れてしまうのです(笑)あまりに慣れすぎたのか、あんまりトラブルを思い出せません。もっといろいろあったはずなのに!!!
また、お買い物やリクシャに乗るのに「おつりがない」などもう日常茶飯事すぎて、困るから銀行で両替するときに「細かいお金に変えて!」と頼んだり。アイスクリームにアリが入ってたり(アリを取り除いて食べたw)「デリーに行こう!」を観ているうちに、そんなインドの旅を思い出しました。
私はこの映画を、海外のこと・インドのことをよく知らない人にこそ観てもらいたいと思います。
他のボリウッド作品に比べて、よりリアルなインドを映画を通して体験できるからです。
こんな国もあるんだよ。それがいい、悪いじゃなくて「まぁ結果よければいいじゃん」的な
肩の力が抜けた考え方もあるんだよ、と。そんなメッセージを受け取ってもらえたらなと思います。
さて、劇中でインド代表のおっちゃんを熱演したヴィナイ・パタック氏に昨年のIFFJでお会いすることができました。実際のヴィナイ氏は、劇中のマヌおっちゃんと違ってスマートな紳士でした。
作中ではでっぷりと太っていましたが、これはやはり役作りなんですね。
Rab Ne Bana Di Jodiでシャー・ルク・カーンとの共演していますが、その時はだいぶ身体を絞っていたようです。ちなみにヴィナイ氏はシャールクより年下でした!!
『デリーに行こう!』の詳しい解説や、ヴィナイ氏へのインタビューなどは、
ナマステボリウッドさん制作のパンフレットにとても詳しく書いてあるのでオススメです。
ミヒカが冒頭で遭うヒジュラについての記述もあり、非常に興味深く読ませていただきました。
ミヒカ役のラーラ・ダッタについてもいろいろ書きたいのですが、長くなりすぎるのでこのへんで。
Ratna